去勢すると寿命が伸びる 去勢する?

韓国の宦官の寿命 (Current Biology Vol 22 No 18 R792 2012)と言う論文によると、

 

これまで長寿と生殖の間のトレードオフの関係が多くの論文によって指摘されている。ヒトを含む多くの種で女性ホルモンの効果によりメスはオスよりも長生きする。オスにおいて去勢して男性ホルモンの源を断つと多くの動物でオスの寿命が伸びることが知られている。ヒトの場合はどうかを調べるために韓国の過去の記録にある宦官家系について調査した。宦官の家系では家系を維持するために、去勢した少年を養子にしていた。この家系の81人の宦官の記録に残る寿命について調査したところ平均寿命は70±1.76歳で去勢していない同等の家系と比較すると14.4歳-19.1歳寿命が長かった。有力な説の一つは、男性ホルモンは免疫を抑制するために寿命が短くなると言うものだ。男性ホルモンは心血管系に悪い作用を引き起こす。開祖のDeuk-BuYoonからの家系図である養世系譜は1805年に13代目のYoon Muk Leeにより書かれた。この記録は朝鮮王室事務局の朝鮮王室年代記とも一致していることを確認しており、さらに生死の記録だけでなく、彼らの活動も同様に記録されている。

この記録にある385人の宦官のうち81人の寿命を確認して分析した。図に示したように平均寿命は70.0±1.76歳で最短寿命は27歳、最大寿命は109歳であった。寿命は遺伝的要素や社会的、経済的な因子で影響されるので社会的ステータスの同じで同時期に生きた宦官でない普通の3家系を対照として選んだ。この3家系の平均寿命は50.9-55.6歳でMon家系は最短は15歳、最長は100歳、Shin家系は最短は13歳、最長は95歳、Seo家系では最短20歳、最長81歳であった。有意に宦官家系では寿命がながかった。また各家系で寿命を短い方から長い方に並べた時に25%から75%までをボックスとしてグラフに表すとボックスの長さは19歳に相当し最もコンパクトに収まる。また宦官家系81人の内100寿者は3人で、これは現代の先進国の100寿者の割合の130倍となる。王や王族の平均寿命は、それぞれ47±3.21歳、45±2.79歳であった。報告されている別の研究報告によると精神病院に入院している去勢している男性患者は、同所に入院している去勢していない男性患者よりも14歳長生きすると言う報告(69.3 vs. 55.7)と今回の研究の結果(70 vs. 50.9-55.6)はよく一致していた。アメリカの論文「女性の90歳を超える長寿の予測因子としての初潮年齢と閉経年齢、および生殖寿命: 女性の健康イニシアチブ」(Menopause. 2017 January ; 24(1): 35–44.)の報告によると、女性においても平均年齢74.7歳の16251人を対象とした研究で8892人が90歳以上生きた。12歳以降に初潮を迎えた女性は12歳以下で初潮を迎えた人に比べて90歳以上の長寿になる人が1割多いことや、閉経が55歳以降の人は40歳以下で閉経のひとよりも90歳以上の長寿になる人が2割多かった。また子供を産める期間が40年以上の人は、33年以下の人よりも1割以上90歳以上の長寿になる人が多かった。

このように男性ホルモンや女性ホルモンは人間の寿命と大きく関連している。サプリで出ているエストロゲンやDHEAはこの関連の製品だが、これらが有効かどうか今後調べてみよう。

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